【創作】裸眼

楽して痩せたい
だなんて変な言葉だなって思う

絶対無理だもん
無理って分かってるのに、皆言ってる

だから
「苦労して痩せたい」
って言ってみた

目の前のめがねちゃんは笑ってる
親友の女の子
私の初恋で、
現在進行形で好きな女の子
変な男と付き合ってる
20代の癖して糖尿病の男と付き合ってる
めがねちゃんは27歳
めがねちゃんを追って、わざわざ同じ所に就職した私は早生まれの26歳

めがねちゃんとは赤ちゃんの頃から一緒のいわゆる腐れ縁というやつで、人間嫌いで幼稚園への登校拒否を親へ訴えていた私も、めがねちゃんが、いっしょに行こうよ!と家にお迎えに来てくれた時にゃあ、めがねちゃんのお手々めがけて猛ダッシュしたもんだね

私は小さい頃からお花が好きなんだけど、
めがねちゃんは、薔薇みたい
きちんと人間特有のトゲがある
人間が大嫌いな私だけど、私はそのトゲに自分の指の腹を押し付けて血を出したいと思うほどに愛しい

小学生の頃は6年間同じクラスで、
将来の夢の作文の発表の授業で、めがねちゃんは、自分には無いものを持っているから象になりたいですと言っていた。自分には無いものと言うのは、長い鼻の事であろう

めがねちゃんは、常に吹いたシャボン玉よりも上の方で浮いていた。イコール、私だけのものだった

コンビニの半額で買った、やけに味の濃い物ばかりで構成されているお弁当を頬張りながら、彼氏への誕生日プレゼントは何がいいのかをずっと私に聞いてくる

私のものだっためがねちゃんは、
誰かのものになった
知りたくもねえよ、そんなやつ
プレゼントなんて贅沢言うな
苦しい
彼氏なんて、彼氏なんて
ブラックホール 私の独占欲

可愛い顔した めがねちゃん
ずっと、ずっと、綺麗が更新されていってる
まるでApple社みたい
バックアップを取らなくちゃ
これは私だけの記憶だから
今も、めがねちゃんは笑ってる
お弁当食べて、笑ってる
もっと美味しい物を食べさせてあげたい
その時の笑顔を印刷して、私の毎日新聞にしたい
めがねちゃんがいれば、文字なんていらない
そのかわゆい笑顔だけで百億万部突破!
苦手な上司にお魚型のケースに入ってる醤油をぶっかけちゃえよ
めがねちゃんって、なんか夢の中でも踊ってそう
ガンジス川にも行ったことありそう
今度のお泊まり会で聞いてみようっと

ずっと一緒にいるのに、
めがねちゃんの知らない事があるのが憎いし、
知らない事があるのに安堵してる自分がほとんどで。
ヤになっちゃうよ、増税の次にさ

「めがねちゃんは、増税する前に何か買うの?」

お弁当もぐもぐ
目の前のめがねちゃんに聞いてみた

「私の夢はね、今も象さんになる事だよ
ぜえぜえ、息切れしちゃうな
…象ぜえ。面白いことゆうね」

共喰いが合法だったら可愛過ぎてもう既に喰ってるよ

「ねえ、なんで、私めがねなんかかけた事無いのに、私の事、めがねちゃんって呼ぶの」

「…なんとなくだよ」

違うよ。
生まれ変わった来世で私は、今度は眼鏡をかけた貴方と、結ばれるようにずっと願っているの