【創作】 美しい変化

雲の上を突き抜けてみた感想だが、
いまいち手応えが無かったとしか言いようが無い。

「本当は宇宙飛行士になりたかったんですけど。
ええ、宇宙飛行士よりも、こっちの方が給料良いもんですから。安定求めてパイロットになった訳ですよ
ここんとこ、宇宙旅行なんて、流行り終わってますからね。」

「あ、ここは書かなくていいですよ
流行り終わってるの部分ね。
書かないでください。金払うんで。」

夢とか野望とか抱きまくってた10歳の頃の自分は、
こんなにも汚い大人になってしまった。

全部、周りが悪いんだ。
だって、変じゃないか
宇宙には終わりがないんだぜ
終わりが無いロマンとやらを探求しようよ
宇宙飛行士なんてダサいだなんてさ
俺が10歳の頃は、みんな宇宙飛行士になりたいって
流行ってるからなりたい訳じゃなくて、
なりたくてなりたいって言ってたんだ。
周りがどう思うかとかそんなん吹っ飛ばしてさ、
全力で漕いでいた幼少期の自転車のペダルとか
いくらで売っているの?
買い取らせておくれよ

家に帰ったら妻がいる。
トーク番組で共演した二世タレントだ。

「ねえ、お仕事楽しかった?」

「うん」

「本当に?」

「うん」

二世タレントだけど、
二世タレントっぽくない所に惹かれた

「良かった」

全て、自分の言葉で喋ってる
羨ましかったんだ

「恵まれてるよな、お前は。」

「え?」

「親にも優しくされてさ、人間関係で困った事なんてひとつも無くてさ、なんでも好きなもん買って貰えたんだろ。俺はさ、俺はさ、普通が欲しかったんだ。
どれだけ欲しい物を手に入れても、その普通ってやつは無くてさ、なんかさ、疲れたんだ。眠れないんだ。怖いんだ。評価とかさ、自分は商品じゃないのに、品定めされてさ。」

「じゃあ、一緒に品定めする奴を、
こちらから品定めしてやろうよ。」

とても綺麗で

「え?」

「なんで私の事好きになったの?」

自分に自信があって

「分かんないよ」

いつでも抱きしめてくれる

「一目惚れとか?」

「分かんないよ」

「貴方のこと見てる人もね、
そんな感じで貴方のこと見ているよ」

「嘘」

「ホント。」

「そうか」

「だからさ、エゴサーチとかも
ちょっとだけで、いいんじゃない?」

「なんで?」

「分かんない癖して、
分かってるって言う感想しか浮いてないもの
自己満足ばっかり。」

「…君は凄いね」

「凄かないわ。」

一目惚れだった

「悪ぶらなくていいよ、
貴方の悪くない所が好きなのに」

「僕は悪い人だよ」

「自己評価低めね」

「自己評価高めな奴の方が良い?」

「そのまんまでいいよ」

「…ありがとう」

「どれだけ辛い時でも、
私にありがとうって言ってくれる貴方の方が凄いわ」

「ねえ、次の空の旅行、来週で良い?」

「うん。今日の晩御飯、肉じゃがで良い?」

「うん。」

「ねえ、私が宇宙行けない体質だからってさ、
無理してパイロットでいる必要は無いのよ
宇宙飛行士の資格だってさ、取るだけ取っててもいいもの。宇宙にいる時も、私待ってるから。
ちょっと寂しいけどね」

「…僕の夢はね、」

「なに?」

「君に変わったんだよ」