【創作】シーグラス

シーグラスとは、ガラスが丸くなって海で拾えるやつさ

決して、Cグラスでも無いし
サングラスでも無い


宇宙人が夢の中で教えてくれる事は、
大抵Wikipediaに載っている




ウイルスが流行して早2年
たまに外に出れば電子機器の発達からきちんと時の流れを感じて、マスクとは嫌でも毎日顔を合わす。
悲しい事に、友達と写真を撮る時もマスクを撮り忘れている子が多い





夢の中で宇宙人に聞いてみた
このウイルスは、
いつになったら終わるんでしょうか


「君は、丸くなったね」


…正月太りの話ですか?


「いやいや違う違う。人としてだよ、人として」


話を逸らさないでもらっていいですか


「逸らしてもいないんだよ。
ほら、昨日話したじゃんシーグラスの話」


はい


「ガラスみたいに傷つきやすい君は、
海に流されずに人として丸くなったんだ」


…と言うと?


「ウイルスは波だ。
波が大きくなったり、かと思えば平穏になったり」


はい


「人間は楽しくて忘れているけれど、
一昔前なんかは恋人達が心中してた場所なんだよ海って言うのは」


はあ


「海って言うのは、どんな心霊特番で映されてもおかしくない心霊スポットなのさ!」


…うーん


「綺麗な場所ほど、何かがあるんだよ」


湯婆婆みたいな話し方になりましたね


「…」


宇宙人も金曜ロードショーとか観るんですか


「とにかく!君は私に言われたからって、
真冬の海にシーグラスを探しに行くような人間じゃなかったんだ!それを私は言いたかった。」


…それは、
自分が自分でいるか、確認したかったからです。
最近私は夢のような良いことが多いから、
夢と現実の境い目がどんどん分かりにくくなってる。だけど自分が自分でいたかったから、夢で見た事を、現実で実際に行う事によって、夢を夢、現実を現実と分けたかった。


「最近寝れてる?」


ええ、凄く。

このウイルスになったから貴方と夢の中で会えるようになって、何か、会えなくなるのも嫌なような気がして


「それは違うよ」


え?


「私は君の守護霊さ
君が成人する年に夢の中で出てくる決まりだったんだ
だからウイルスは全くもって関係ないよ」


そうなんだ






安心して、涙がぽろぽろ流れてきた
私が人生で一番楽しかった幼稚園のとき、おばあちゃんが個人営業している薬局屋の前で立っていた私よりも背の高かった宇宙人の人形
毎日来るところじゃないんだよと言いながら、毎回お菓子を出してきてくれた大好きなおばあちゃん
毎回夢に出てくる宇宙人の声は、あのおばあちゃんだ


「気持ちが落ち着かない時はねえ、
抑肝散加陳皮半夏と言う漢方を飲むと良いよ」


夢の中で語る漢方の知識で薄々は気付いていた。
懐かしい、あの甘ったるいカサカサの紫色の喋り方と





おばあちゃん


「…私は宇宙人だよ」


いつもありがとう


「こちらこそ」



いつも変わらない宇宙人の顔が、
うっすらと微笑んだ気がした




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